2019/3/25/ 05:50

【特集】超高齢化社会のイノベーション「エイジングテック」

【特集】超高齢化社会のイノベーション「エイジングテック」

Shutterstock/DisobeyArt

超高齢化社会になると何が起きるのか?

 世界で真っ先に超高齢化社会を迎える日本。2017年の日本の高齢化率は27.7%。これが2065年になると38.4%へと上昇する。約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になる推計だ(※1)。

 当然、働き手の比率も減り、現役世代1.3人で1人の65歳以上を支える時代が到来する。世界的に高齢化は進行しているが、日本は圧倒的なスピードで超高齢化社会に到達する。

 超高齢化社会を迎えることで、一体何が起きるのだろうか?

 最も大きな影響を受けるのは医療・介護分野だ。地方での医師不足、高齢者医療費の増大が見込まれており、遠隔医療や予防医療の重要性が増している。良質な睡眠・食事・運動による健康促進、認知症の予防・早期発見などが求められる。

 介護分野の問題はもっと深刻だ。日本では2025年までに245万人の介護者が必要とされている(※2)が、その介護者を確保するめどは立っていない。

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 米国も高齢化が進んでおり、介護需要は高まっているが、米国の場合は移民が介護者の役割を担っている。一方、日本は言語の壁や治安の不安などもあり、移民の受け入れは進んでいない。人手を必要とする介護業務はなかなか生産性が上がらず、介護者の待遇が引き上げられない。

 結局、日本では国内・海外からも介護者を確保するのが難しくなっている。人材確保が難しいならば、介護ロボットや書類のデジタル化などによる生産性向上、介護者の待遇向上は欠かせない。

 高齢化した人々はコミュニティから遠ざかっていきがちだ。足腰が弱くなったり車の運転が難しくなり、外出頻度が減ることが一因だ。仕事をリタイアし配偶者に先立たれてしまえば、社会との関わりは激減する。人との関わりが減れば、気力は減退し、肉体の健康にも響いてきてしまう。

 日本での孤独死は年間で約3万人にのぼり、一人暮らしの高齢者の4割超が孤独死を「身近な問題と感じている」と考えている。デジタルコミュニケーションツールやSNSなどのコミュニティプラットフォームはこの解決策になるだろうか。

 高齢者にとって、便利に快適に暮らせる環境もより求められていく。生活を取り巻く住宅、家電、移動手段、買い物、お金などを高齢者にとっても使いやすいものにしていかなければいけない。ほかにも、SNSの発達などにより終活のあり方も変わっていくかもしれない。

エイジングテックは日本を救うか?

 超高齢化社会は間違いなく訪れるものだ。適切な対応ができなければ、日本の未来は暗いものになってしまう。

 今回特集する「エイジングテック(Aging Tech)」は超高齢化社会へのアプローチの一つだ。エイジングテックとは、高齢化社会(Aging Society)の課題を解決するテクノロジーやスタートアップのことだ。

 エイジングテックの大きな特徴は、業界というより社会課題にフォーカスしている点にある。そのため対象領域は多岐にわたる。遠隔医療、介護者マッチング、介護ロボット、スリープテック、ラストマイルデリバリー、スマートホームなど、枚挙にいとまがない。

 特集後半で紹介する予定だが、たとえば高齢者に外出体験を提供するRendever、高齢者の振込詐欺を防ぐTrue Link Financial、スマホでアルツハイマーを発症前に検知するNeurotrack 、ヘルパーと高齢者をつなぐアプリのHonor 、高齢者向け住宅を検索できるSeniorlyなどのスタートアップが出てきている。

 エイジングテックは必ずしも新たな技術である必要はない。ロボティクス、メンタルヘルスケア、ラストマイルデリバリー、スマートホーム、ウェアラブルなど、既存のテクノロジーサービスを転用することが十分に可能だ。

 エイジングテック産業は世界で数十兆円規模のマーケットと言われ、日本は世界に先駆けてその市場と対峙する。もし日本でエイジングテックに成功できれば? それは世界最先端事例となり、他国に輸出できるチャンスとなる。IT産業で存在感を示せなかった日本は、はたしてエイジングテックをリードできるだろうか。

 本特集ではエイジングテックのプレイヤーたちに直接取材。インキュベーター、日系大企業、シリコンバレースタートアップ、大学研究者などの観点から、エイジングテックを掘り下げていく。

[目次]

#1 超高齢化社会のイノベーション「エイジングテック」

#2 【SOMPO】テクノロジーで高齢化社会の課題解決に挑む

#3 僻地医療からシリコンバレーへ。日本の「本当の問題」を話そう

#4 世界中のイノベーションを持ち寄る、グローバルネットワーク「Aging2.0」

#5 【日本企業】なぜ大企業はエイジングテックに取り組むのか?

#6 スタンフォード教授が語る「睡眠テクノロジーの真実」

#7 法的書類からSNSまで。終活をサポートするCake

#8 自動運転車が食料品を配達してくれるAutoX

#9 ガソリンスタンドが家にやってくるBooster Fuels

#10 【スタートアップマップ】注目のエイジングテック一挙紹介

出典)
※1 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html
※2 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323.html

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