2016/3/18/ 02:30

生徒と先生をつなぐSNS「Edmodo」CEOが語る、教育の未来

Startups #19 Edmodo
CEO Vibhu Mittal
生徒と先生をつなぐSNS「Edmodo」CEOが語る、教育の未来

先生と生徒を繋ぐソーシャルネットワークサービスを運営しているEdmodo。先生と生徒のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、世界中の先生同士が学習コンテンツをシェアすることで、より良い学習環境の形成を目指すプラットフォーム。現在、全米の93の学区での導入実績を持ち、すでに日本にもサービス展開をしている。今回はCEOのMittal氏に、Edmodoの概要やEdtechの未来などについて聞いてみた。

世界で6500万人のユーザーが利用する教育プラットフォーム

―まずEdmodoの概要を教えてください。

 Edmodoは教育に特化したソーシャルプラットフォームです。現在、5000万人以上の先生が参加しており、勉強の教え方、教室での様々な活動、成功事例、専門的な能力の開発などについてディスカッションしています。また先生たちは自分たちの生徒をプラットフォームに招待して一緒に利用することができます。現在、生徒数は1500万人で、先生と合わせて合計6500万人がEdmodoを使っていることになります。ユーザーのうち、半数が米国で半数は海外です。Edmodoは教師や学生が学習ツールにアクセスできるプラットフォームとして、35万もの学校で広く使われています。

―どのような年代の生徒が利用しているのですか。

 小学校、中学校、高校、大学で使われており、5歳から20歳までの生徒のユーザーがいますね。一番のメインユーザーは中学校と高校です。小学校は少し難しくて、アメリカではほとんどの幼稚園児から小学校1年生にコンピューターを利用させていません。小学校5年生や6年生になると、ある程度はコンピューターを利用させています。

―どうやって多くのユーザーを集めたのですか。

 Edmodoはシカゴ出身の2人の創業者によって、2009年に設立されました。当時、多くの学校がFacebookなどのソーシャルメディアを活用しようとしていました。しかし、Facebookを利用すると、ついつい生徒たちは写真を見たり、友達とメッセージしたりしますよね。そこで、彼らは学校で使うためだけのソーシャルメディアを作ろうと考えたのです。

 Edmodoは最近までほとんどマーケティングを行っていませんでした。クチコミやツイートなどを通じて、現場の教師のあいだで自然に広まっていったのです。教師たちがEdmodoを見つけて、学校で使うようになり、他の先生に広めてくれるという好循環が生まれています。また、私たちがEdmodoの使い方をレクチャーすることもしています。ある学区で多くの教師、たとえば20~25%の教師がEdmodoを使っているとわかったとしましょう。その場合、私たちはその学区に出向いて、まだ使っていない教師たちにレクチャーさせてほしいと申し出ています。そうすることで多くの教師がEdmodoを使ってくれるようになるのです。

なぜ教育に特化したSNSが必要か

―Facebookにもプライベートグループの機能はあります。他のSNSと異なる点を教えてください。

 Facebookは知り合いや友人とつながるためのものですし、LinkedInは仕事関係の人たちとつながるものです。Edmodoも同じように先生と生徒をつなぐSNSではありますが、FacebookやLinkedInのようなSNSではありません。なぜなら、Edmodoは先生のためのSNSであり、生徒ができることにはかなりの制限があるからです。たとえば、生徒は教室内の他の生徒とつながることはできますが、他の教室の生徒とはつながることはできません。生徒が手を挙げて発言をした時、教室内の他の生徒がそれを聞くことができるのと同じように、Edmodoでも生徒は教師には個別メッセージを送れますが、生徒が生徒に個別メッセージを送ることはできません。生徒がメッセージを送る際は、生徒全員に送られます。そして教師によるすべての回答は、生徒は誰でも見ることができます。Facebookなどに比べて、こういった行動制限を設けていることがEdmodoの重要な点です。

 EdmodoのSNSとしての最大の特徴は、すべて学校での教育に最適化しているということです。Edmodoは教育のためのつながり、学習のためのネットワークであろうとしています。私たちは学校にとって重要な、多くの追加機能を持っています。たとえば、先生が生徒をスピーディーに評価できる機能があります。いま米国には共通コースがあり、生徒にどう教えるべきか、生徒が何を学ぶべきかの枠組みとなっています。これはまだ少し新しいものなので、先生たちもそれに慣れているところですし、英語や数学などの共通コースの評価基準はまだきちんと定義されていません。そこでEdmodoでは一般的な科目の評価フレームワークを提供しています。その他にも私たちは多くの機能や教材やビデオも持っており、先生たちが必要な機能やドキュメントを提案したり、探しやすくしています。

2016年に日本版もリリース

―御社はどのように収益を得ているのですか。

 2つの収益モデルがあります。1つ目は学区や学校向けのプレミアムパッケージです。自分たちの管理画面を持つことができ、教室で何が起きているのか、毎日何人の教師と生徒がログインしているのか、何をしているのかがわかるようになります。

 2つ目はマーケットプレイスです。出版社のつくった教材、アプリなどをオンラインで売買することができます。出版社のアプリは1000ほど売られており、私たちの一つの収益源となっています。もちろん無料のアプリや教材も提供されています。

―Edmodoは海外でも使われているとのことですが、日本ではどのように展開していますか。

 日本では私たちはKDDI、Z会と提携しており、日本語版もリリースされましたね。Edmodoのユーザーのほとんどは英語圏ですが、それ以外では日本がもっともよく使われているケースのひとつになります。

 海外展開にあたっては、各エリアの教育システムを理解することはもちろん、教育コンテンツを持つパートナーと連携することも大事です。ユーザーは私たちの教育プラットフォームだけでなく、教育コンテンツも必要とするからです。たとえば、イギリスではケンブリッジ大学出版と提携しています。ケンブリッジ大学出版は非常に古い出版社で、教科書やオリジナルの教材を出版しています。日本でもZ会がオリジナルの教材を持っていますが、そういったパートナーと連携してくことが理想です。

―実際にEdmodoを導入した事例を教えてもらえますか。

 成功事例の一つは、バージニア州のチェスターフィールド学区です。約4年半前、この学区では生徒一人ひとりにコンピューターを提供することを決め、同時にほぼ全生徒がEdmodoを利用することになりました。これは生徒たちに非常に良い影響を与えました。英語と数学の成績が大きく伸びたのです。コンピューターとEdmodoの利用が影響を及ぼしたと言えるでしょう。

 もう一つの事例は、半年前、フロリダ州でのことです。ある学校で、ある先生が受け持っているクラスがとても成績優秀だとわかりました。そこで、その学校では他のクラスと何が違うのかを調べました。最初の仮説は、「豊富な経験を持つベテラン教師だから」だというものです。しかし、同じようなベテラン教師は他にも存在しており、違うということがわかりました。最終的にわかったのは、この教師はEdmodoを使って、授業の最後にテストをしていたということでした。45分間授業をして、最後の5分間でEdmodoでテストをしていたのです。先生が授業の終わりにテストをするとわかっているので、生徒たちが授業に集中していたわけです。ここから言えるのは、テクノロジーによって、教師は教室に何が起きているのかを知ることができ、また生徒たちはより良いリソースを見つけられるということです。教育は、テクノロジーによって本当に変化していくでしょうし、大きな可能性があります。教育はまだテクノロジーが利用されていない数少ない分野の一つです。これからの5年間で、教育に大きな変化が起きると思っています。

Edtechは世界をどう変えるか

―EdtechについてMittalさんの考えを聞かせてください。今後、Edtechはどのように世界を変えていくでしょうか?

 Edtechによって世界は変わるということ、それは間違いないと思います。どう変わるかをお答えするのは難しいのですが、私が重要だと思うデータをいくつかお伝えします。近年、経済学者は、教育によってどのようにして国の生産性を向上させられるか研究しています。この分野の初期の研究は、Google InstitutionのEric Hanushekが行ったものだと思っていますが、5歳から12歳までの教育を少し改善することで、一国のGDPに大きな影響を与えることがわかりました。彼は歴史的なデータを集めて、シンガポール、韓国、日本といった強い教育システムを持った国をモデル化しました。これらの国は強い教育システムを持っているため、他国に比べて非常にうまくいっています。また最近のハーバード大学での研究では、幼稚園の先生が与えた影響は、27歳の大人になった収入にも影響を与えていることがわかりました。

 そしてテクノロジーは教育の影響を増幅させるでしょう。テクノロジーを使えば、世界中の会ったこともない、言葉の通じない人とリモートワークすることができます。ただ、教育というものは、高校を卒業するまでに12年かかり、大学を卒業するまでに4年かかるものですから、変化が遅くなります。短期的に変化を見ることは難しく、実際のところ、ほとんどの影響は15年、20年後にあらわれるでしょう。
  少し私自身の例をお話ししましょう。私はインドで生まれ育ち、インドで教育を受けました。私は勉強をしたかったのですが、ほとんど本がない環境でした。私の行ける図書館には数百冊しか本がありません。雑誌のTimeやNewsweekは海を渡って配送されてくるため、買うまでに発刊から2ヶ月かかりました。自分で本を買う余裕もありませんから、一生懸命勉強してインド最高峰の大学に進学しましたのです。

 ところが今ではどうでしょう。発刊されて数分以内に最新号を手に入れることができます。オンラインで購入し、閲覧することができるからです。いまや本はKindleなどの電子書籍などで、必要な本は全てオンラインで手に入ります。Edtechが与える影響を正確に予測することは難しいのですが、大きな影響を与えることは間違いありません。私たちは世界中の人といつでもどんなテーマでも仕事をすることができるようになります。日本の人々がインドの歴史を勉強したり、インドの人々がギリシャ語やラテン語を勉強できるようにすることができるようになります。こういった事例は今では珍しいですが、ありえるようになります。テクノロジーとは解決策ではなく、良いことをする力を増幅させるものだと思っています。私はテクノロジーの助けを受けて、教育はもっと良くなっていくと信じています。

アジアとアメリカの教育システムの違い

―日本やアジアの教育について考えをお聞かせください。語学教育や、教育システムはどうあるべきでしょうか。

 まず語学についてですが、テクノロジーによって言語の壁の大部分はなくなっていくでしょう。私はかつてGoogle翻訳の部門で働いていましたが、Google翻訳によって何百もの言語で、翻訳ができるようになりました。リアルタイムでの音声翻訳もできますので、話して2秒後には翻訳システムが英語で話してくれます。ですから時間の経過とともに、言語の壁はなくなっていき、世界の誰とでも話すことができるようになります。

 日本の教育制度については、いくつかの点でアメリカの教育制度とは異なります。私は日本で学んだことはないので、インドでの私の事例としてお話しします。アジアの教育制度は共通して、生徒に創造的なことをするのを犠牲にして、型にはめた教育をすることに重きを置いています。一方、アメリカは極端な教育システムかもしれませんが、生徒が自ら何かを行う機会を多く与えます。私は最も良いのは、創造的な教育と型にはめた教育のバランスが取れたものだと思います。私はインドで非常に優れた、システム化された教育を受けましたが、もう少し自分がしたいことを選べるような教育だったらと思っていました。私は多くのことを本から学び、自分が実際にしたことから学ぶことは少なかったのです。私の子供はアメリカで教育を受けていますが、彼らは教科書を持っていないこともありますし、先生とのディスカッションの中で勉強していることもあります。アメリカの子供を見ていると、喜んでリスクを取って新しいことを試しています。アジアとアメリカの教育、どちらにも価値があると思います。インドや日本を始めとしたアジアは、生徒にもっと多くの機会を与えることを取り入れれば良いと思います。

Edmodoを安全な教育コミュニティに

―今後の御社のビジョンを教えてください。

 Edmodoは、すべての生徒と教師が教育リソースにアクセスできるような“接着剤”とその土台となる“布地”になりたいと思っています。私の言う「教育リソース」とは、単なる教材だけだなく、生徒の潜在能力を最大限に発揮させるために知っておくべき人々のことも意味しています。

 学校について最も大事なのは、子供が学校に通う時、子供を学校に送る時、子供の安全の心配がないということです。同様に、私はEdmodoというSNSを安全な場所にしたい。時にインターネットは非常に恐ろしい場所になることがあります。Edmodoは子どもたち、何をすべきかを知っている教師たち、それを見守っている学校関係者が存在する、安全な場所にしたいのです。

 これから5年、10年でEdmodoはどういう場所になるのか。一般的な科目を学ぶのであれば、同じ学区や学校内でよい勉強仲間を得られる場所になるでしょう。では、一般的ではない科目を勉強する場合は、どうでしょうか。たとえば、インドでは幼稚園から日本語を学べる学校はほとんどありません。しかし、Edmodoであれば、グローバルでたくさんのユーザーが使っていますから、同じものを学ぶ仲間を見つけ出すことができます。日本語に限らず、たとえば日本の劇や日本の花のアレンジを学びたい人を見つけることができ、教室で他の生徒と話し合い、一緒に学んでいるような場所に感じられるでしょう。他の人と同じことを学び、親密で安全な教室のように感じられるグローバルなコミュニティになると思っています。

―最後に、日本の読者にメッセージをお願いします。

 私たちは日本の学校教育の制度についてもっとよく知り、Edmodoを日本で役立つものにしていきたいと思っています。あらゆる国、あらゆる文化、あらゆる教育システムは、他の国とは違うものだと理解しています。私たちは喜んでEdmodoを日本の皆さんのニーズに合うようにローカライズし、日本に役立てるものにしたいと思います。子どもたちが学校や日常生活でEdmodoを使って幸せになることは、私たちにとって何よりも幸せなことです。

Vibhu Mittal
Edmodo
CEO
1986年にインド工科大学を卒業。1987年にオハイオ州立大学で修士号、1993年に南カリフォルニア大学で博士号を取得。Googleなどを経て、2010年に教育系スタートアップのRoot-Oneを創業。2013年にEdmodoに入社し、CTOに就任。2014年から同社CEO。
企業情報
設立2008年
事業内容先生と生徒をつなぐ教育SNS「Edmodo」を運営
資金調達額87.5million(2016年3月現在)
従業員数50人以上~
拠点San Mateo
URLhttps://www.edmodo.com/
CrunchBasehttps://www.crunchbase.com/organization/edmodo#/entity
設立
2008年
事業内容
先生と生徒をつなぐ教育SNS「Edmodo」を運営
資金調達額
87.5million(2016年3月現在)
従業員数
50人以上~
拠点
San Mateo
URL
https://www.edmodo.com/
CrunchBase
https://www.crunchbase.com/organization/edmodo#/entity

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