2017/5/29/ 14:43

海外BtoBスタートアップが日本企業との協業を成功させる方法
〜セキュリティスタートアップSoha Systemsと富士通の連携事例に学ぶ〜

海外BtoBスタートアップが日本企業との協業を成功させる方法
Akamai(前:Soha Systems)Head of Business Development
Avishai Ziv
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Fujitsu Laboratories of America Researcher
Takuro Watanabe

富士通 マーケティング戦略室 シニアディレクター
Naomi Tokunaga

富士通 マーケティング戦略室 ビジネス開発部
Yuya Yoshizaki

日本市場は巨大であるものの、言語や商慣習の違いにより、海外スタートアップが進出するのは容易ではない。日本最大のITサービスプロバイダーである富士通はそんな海外スタートアップの日本展開を支援している。現在は「富士通アクセラレータプログラム」を展開し、国内外問わずスタートアップの協業を図っている。今回はアクセラレータプログラムを通じて富士通との協業を進めたシリコンバレー発のセキュリティスタートアップSoha Systems(注:同社は2016年10月にAkamaiによって買収済み)と富士通のコラボレーション事例について聞いた。

クラウドアプリケーションへのセキュアなアクセスサービスを展開

―まずSoha Systemsの企業概要を教えてもらえますか。

Ziv:もともと2013年に設立された若いスタートアップです。法人向けにクラウドアプリケーションへのセキュアなアクセスサービスを提供しています。独自のサーバーを購入する必要などなく、企業がクラウドのアプリケーションサービスに安全に簡単に低コストで接続できるようになります。

Tokunaga: Soha Systemsは、2016年に当社のアクセラレータプログラムに参画しました。Soha Systemsのサービスを使えば、クラウドで高いセキュリティを簡単に便利に実現できます。当社と親和性のある、非常に可能性を感じるサービスでした。

Ziv:当社の主なクライアントは大企業です。当社のサービスを使えば、富士通などの大企業にとっては大きなコストの節約とセキュリティ向上に役立ちます。
 当社にとっての課題は、当社の競合は大手IT企業であり、潤沢な資金が必要なことでした。そこで、2016年10月にCDNやクラウドサービスをグローバルで提供するAkamaiによって買収され、現在は同社の新部門の製品として展開することになったのです。

どうすれば日本市場に進出できるのか?

―日本は世界3位の経済規模があります。また、日本には多くのグローバル企業が存在し、取引することで実績づくりやブランディングにも役立つこともあると思いますが、海外スタートアップにとって日本市場への取り組みの課題は何だと言えますか?

Tokunaga: 日本のIT市場は独特な構造を持っています。SIerの存在が大きく、他国のように個々のITベンダが直接企業の情シス部門と契約することが少ないため、多くの場合、営業スタイルを変える必要があります。また、日本企業は細かな要望を持っており、海外スタートアップがその要求に応えるのは簡単ではありません。

Ziv:当社の顧客の30%は米国以外です。クラウドのサービスであれば、海外でも展開が容易です。しかし、スタートアップは、わざわざ日本向けにローカライズするようなリソースはありません。ですから、日本企業の間に入ってくれる、富士通のようなITサービスプロバイダーが必要だと思います。

世界トップ5に入るITサービスプロバイダー

―日本に数多くあるITサービスプロバイダーの中で、富士通の強みとは何でしょうか。

Yoshizaki:まず規模と実績です。富士通は世界180カ国以上で事業を展開し、約16万人のスタッフがお客様をサポートしています。そしてITサービスプロバイダーとして、国内でNo.1、グローバルでも世界No.5の売上を誇っています。またFortune誌の「世界で最も賞賛される企業」にも5年連続で選出されています。

Watanabe:数多くの海外IT企業とのパートナーシップの事例も豊富にあります。たとえば、これまでにパートナーシップを結んだ企業は、Cisco Systems、Intel、Microsoft、Oracleなど、枚挙に暇がありません。パートナーを結んだ企業と一緒に、日本企業への導入を行ってきました。

Ziv:富士通は規模が大きいですが、驚くほど動きが速く柔軟です。今まで私が一緒に働いてきた日本企業では見たことがないほどです。契約締結前から、多くのエグゼクティブを紹介してくれ、便宜を図ってくれました。

協業が前提。目的が明確なアクセラレータプログラム

―Soha Systemsが参加した「富士通アクセラレータプログラム」の概要を教えてください。

Yoshizaki:「富士通アクセラレータプログラム」は、革新的なスタートアップの技術・サービスと富士通の製品・ソリューション・サービスを組み合わせ、世の中へ新たな価値を提供するプログラムです。募集カテゴリは主にAI、IoT、セキュリティ、クラウドプラットフォームです。
 参加するスタートアップは、富士通の持つ約17万社の顧客基盤、大規模な事業展開に必要な販売、保守、生産、コールセンター機能を最大限に活用した協業を進めることができます。これまでに2年間で25社のアクセレータプログラムへの参加があり、そのうち約6割が富士通のサービスへの組み込みや、顧客への共同提案という実績につながっています。

Watanabe:対象となるスタートアップは、アーリーからミドルステージの企業です。日本市場に対してアプローチしたいBtoB企業が、富士通との相性が良いと思います。企業規模は問いません。が、まだ企画段階ではなく、すでにプロダクトをリリースしている必要があります。

―プログラムではどのようなことをするのでしょうか。

Watanabe:期間は3ヶ月間で、商品のテスト・検証、富士通のサービスへの組み込み検討、クライアントへの導入テストなどを行います。商品のテストは、日本基準で厳しく行いますので、スタートアップからは「おかげでいろいろとバグが発見されて、品質が向上した」と感謝されています。

Tokunaga:プログラム中は協業を進めることに集中した運営をしています。海外スタートアップとは、電話会議を中心に協業検討を行います。また、スタートアップは出資を受けることも義務ではありません。実は、Soha Systemsは出資のお話をしている最中に、Akamaiが買収することになりました。出資をしていれば良かったのですが、残念でした(笑)。

―Soha Systemsの場合、なぜプログラムに参加することにしたのですか?

Ziv:もともと総合ITベンダーとして富士通の名前は聞いていました。最初にお会いしたのはアメリカのカンファレンスだったと思います。その後、Watanabeさんを紹介され、富士通と一緒に歩む道のりが始まったのです。アクセラレータプログラムのアイデアは私たちにぴったりだと思い、すぐに申し込みました。

Watanabe:申し込みをしたのは2016年2月でしたね。

Ziv:そうでしたね。そして3月にはプログラムが実際に始まりました。富士通とのパートナーシップの機会があるとわかっていましたので、真剣に取り組みました。富士通のITチームがテストし、有料のパイロットも行いました。

事業部が協業にコミット

―実際にプログラムに参加して、どんな成果がありましたか。

Ziv:このプログラムは、一般的なアクセラレータに比べて目的が明確です。富士通との協業に目的が絞られているため、大変有意義で、大きな成果が得られました。私たちは小さなスタートアップですが、アクセラレータプログラムのおかげで、富士通と協業することができたのですから。

Tokunaga:当社のアクセラレータプログラムは「富士通と一緒にビジネスをする」という目的にフォーカスしています。大きな特徴としては、当社の事業部がコミットすることです。他のアクセラレータプログラムの場合、プログラム運営部門がスタートアップを選定するものの、事業部のコミットが得られないことがあります。その点、富士通ではすべて事業部がコミットして、スタートアップを採択していますので、コラボレーションが非常に効率的です。

Ziv:実際、もうすぐ富士通とは販売契約を締結予定です。富士通のK5にて当社がサービスを提供されることになります。2017年春にはマーケティングを開始するでしょう。これはスタートアップにとって非常に大きな成果です。
 もしこのプログラムに参加せずに、富士通と協業する場合、社内のキーパーソンを探すだけで何ヶ月もかかるのではないでしょうか。このプログラムには、富士通の経営幹部がコミットしているため、そんな手間は必要ありません。富士通と協業するための障壁はすべて取り除かれているのです。

日本市場だけでなく、グローバル市場の戦略的パートナーに

―今後、両社ではどのような展開を一緒にしていきますか。

Ziv: アクセラレータプログラムをきっかけに、富士通とのコラボレーションは大きなものとなっています。今や富士通は日本市場だけでなく、グローバルでも当社の戦略的パートナーとなっています。

Tokunaga:米国とイギリスへの展開を一緒にしていく予定です。Soha Systemsのような、世界を変えるスタートアップと連携していくのが、今後も楽しみです。

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