2019/8/28/ 08:00

経済成長・社会課題・人材が揃うインド。現地日系VCが語る、インドスタートアップ最前線

経済成長・社会課題・人材が揃うインド。現地日系VCが語る、インドスタートアップ最前線
[スピーカー]
Incubate Fund India  General Partner
村上 矢
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Dream Incubator India Managing Partner
江藤 宗彦

[モデレーター]
Ishin Group Director
丸山 広大

世界有数のスタートアップエコシステムとして注目を集めているインド。日本企業はインドスタートアップにどう関われ、どう貢献できるのか。日本発のVCであるドリームインキュベータ、インキュベイトファンドの投資家がインド投資の現状、インドスタートアップと日本企業の関係の作り方について語った。

※本記事は「イシン・スタートアップ・サミット バンガロール2019」のトークセッションをもとに構成しました。

経済成長、社会課題、優秀な人材が揃うインド

―まず、なぜインドに投資しているのでしょうか。インドの魅力について聞かせてください。

村上:大前提としてインドは経済成長をしている国で、GDPが6〜8%で継続的に成長しています。人口も現在13億人いて、まだ増え続けて中国を抜くと言われています。

 これだけの成長をしている国であれば、社会課題もたくさんあります。社会課題というのは同時に大きなビジネスチャンスであることも多く、その課題をきれいに解きにいくビジネスが構築できれば、必ず成功すると考えています。

 またインドはソフトウェアエンジニアの人材も豊富で、毎年100万人のエンジニアが輩出されています。スタートアップで何をするにしてもエンジニアは必要ですし、欧米に比べてまだまだ賃金も低い。

 つまり経済が伸びており、解決すべき課題があり、解決できる人材もいる。ですから投資家としてとても魅力を感じます。

江藤:私がインドで日々感じるのは「楽しい」のひと言です。月次で20、30%成長する産業は日本にはそうそうありません。村上さんの言う通り、きちんとしたビジネス・企業に投資できれば、そのような急成長を見ることができますし、魅力的な人と一緒に仕事ができることは楽しいです。

村上:伸びているスタートアップの社長は、本当に優秀です。これだけの人口の中のトップ層と日々やり取りすることは楽しいですし、「3ヶ月で売上が5倍になる」というような急速な成長をするのを見るのも楽しいですね。

―お二人ともインドに4年以上在住とのことですが、インドに対する日本の関心度は変わってきているのでしょうか。

江藤:この1、2年で関心は上がっています。ファンドの話を日本企業に持っていくと、以前に比べて、興味を持って検討する企業が増えています。

村上:バンガロールに常駐している日本人のVCは少ないので、問い合わせをよく受けるのですが、この1年で日本の大企業からインドのスタートアップと何かをやりたいという問い合わせは何倍も増えています。日本企業が、インドへの取り組みを真剣に考え始めていると感じています。

村上 矢
野村證券グループの東京及びNY拠点にて一貫してIT/インターネット領域のスタートアップを担当。多くの企業をIPOへと導く。2014年にインドへと移り、現地にてスタートアップ立ち上げを経験。2016年にIncubate Fund Indiaを設立し、ジェネラルパートナー就任。妻と一歳半の娘とインド在住5年目。University of Illinois at Urbana-Champaign政治学専攻、歴史学副専攻卒。
江藤 宗彦
2015年から、ドリームインキュベータにて、インドのスタートアップへの投資、インド進出を検討している日本企業の支援を行う。インド赴任前は、日本の大企業向けに、エネルギー、金融、化学、ヘルスケア等の幅広い分野で戦略コンサルティングを提供。ヘルスケアのスタートアップも創業し起業家の経験もある。慶應義塾大学経済学学士。

ビッグデータやコンシューマーブランド、期待できるインドマーケット

―事業会社がインドでのビジネスに取り組む場合、何らかの戦略的なリターンを期待すると思います。いったい何が期待できるのでしょうか。

村上:インドのマーケットはまだ2倍、3倍と伸び続けていきますので、大きなマーケットを取り込むことが期待できます。

 ただ、海外企業がインドで事業をするのは非常に難しいと思います。会社を設立するのは簡単ですが、海外企業が事業を成立させるのは色々な面で難易度が高いのです。そういう意味では、事業化し始めているスタートアップへ投資するなどの方法で、彼らと一緒にインドの成長を取り込んでいくアプローチがよいと思います。

 あとは先ほども話しましたが、人材が豊富な上、優秀で賃金が低いので採用面でもインドは魅力的ですね。

江藤:インドはまだ個人情報保護の制約が少なく、さまざまなビッグデータを取得できます。たとえば、私はヘルスケアの領域でも投資していますが、日本では個人の医療情報の取り扱いは難しい。カルテの電子化、共有化など20年、30年経っても進みませんが、インドだと1、2年で実現できてしまう。

 そういったビックデータを活用したイノベーションを考える際に、インドは適した場所になるのではないでしょうか。

―投資家の視点で注目している領域はどこでしょうか?

江藤:ヘルステックに注目しています。私が注目しているサービスの一つに、がんの情報プラットフォームというのがあります。がん患者が自分の医療データを登録すると、どの病院のどの先生にどういった治療を受ければいいかアドバイスをもらえるというものです。

 日本では、患者が医療情報を入手するには、第一に医師への遠慮がありますし、お金や面倒な手続きなど様々な壁があります。一方で、インドでは、患者が自分の医療データを持つことが当たり前なのです。このプラットフォームでは、患者の医療データがどんどんたまっていき、それを使って様々なビジネスの可能性が広がります。例えば、がん患者がどこにどれだけいるか分かると抗がん剤の配布が効率よくできます。そういった医療データをもとにしたビジネスに注目しています。

村上:ゲームや動画配信など、モバイルのエンターテインメントに非常に注目しています。2年前にインドのデータ通信料金には価格破壊が起こり、いま世界で一番安い国になっています。私も月30GB使って900円ほどしか払っていません。そこにシャオミをはじめとした中国の廉価かつそこそこの性能を持ったスマートフォンが急速に普及してきているので、モバイルエンターテインメントは確実に伸びると思います。

 それからライフスタイルが変化しているので、その周辺のビジネスに注目しています。投資検討をしている領域ではヘルシースナックを作る事業。インドのスナック菓子はこの数十年変わっておらず種類も限定的なのですが、若者の健康志向は進んできてり、ヘルシースナックの領域はビジネスとして伸びると考えています。

 インドではコンシューマーブランドに特化したVCも出てきています。インドは、まだブランドの数が少ないので、ブランドを作るチャンスがあります。初期投資は数千万円で工場もできますし、人件費も安いので、チャンスがあると思います。

デリー、ムンバイをしのぐ、スタートアップの拠点バンガロール

―インドのスタートアップはインド国内での成功を目指しているのですか。それとも、その先のグローバルマーケットでの成功を目指しているのですか。

村上:基本的にはグローバルマーケットを目指しているとは思います。ただインド国内の課題解決のニーズから生まれた事業であったり、事業によっては国内でマーケットを独占するまでに時間がかかったりします。ですから、まずはインドできちんとやろうという考えはあると思います。

 あとは事業体によって変わると思います。ソフトウェアでBtoBの会社であれば、インドである程度試せたら、欧米で売っていくことを考えるでしょう。逆にインドの小売向けに、仕入れのプラットフォームを作るような事業だと、国内での成功を目指すことになると思います。

―インドをどうしても一括りで見てしまいがちですが、バンガロールと、デリーやその他のエリアとの違いを教えてもらえますか?

江藤:スタートアップが集まっている地域はバンガロール、デリー・グルガオン地区、ムンバイの3つがあります。企業の数、ユニコーンの数ではバンガロールが一番多くて、デリー・グルガオン、ムンバイの順です。ムンバイにはインド版ハリウッドである「ボリウッド」があるので、エンターテインメント系が育っています。

村上:我々も投資を始める時に、どこを拠点にするかを考えますが、バンガロールとデリーではあまり変わりません。スタートアップ、ファンドの数ではそれほど差がありませんし、大手VCはどちらにもオフィスがあります。ただバンガロールの方が気候がいいので、私はここに拠点を置いています。デリーは先週、気温が48度でしたし(笑)、大気汚染は深刻です。

 江藤さんのお話のように、バンガロールのユニコーンの数は多くなっています。インドは人材の流動性が高く、ユニコーンの初期メンバーがある程度企業が大きくなると辞めて、また新しいスタートアップを始めたり、他のスタートアップに経営層として入るような、人材のいい循環が始まっています。

―お二人の仕事の中心はバンガロールでしょうか?

村上:投資先の半分はバンガロールです。我々の会社はハンズオンでサポートしていくので、スタートアップの創業者とは週1回ミーティングを行っています。デリー、ムンバイではなかなかそれが難しく、バンガロールの会社の方が良い関係を作れて効果が出やすくなります。

江藤:私も半分がバンガロールで、残りがムンバイ、デリーです。中国では北京、杭州、深センがスタートアップの拠点ですが、インドではバンガロール、デリー、ムンバイです。

後編に続く

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