2019/5/24/ 08:58

インドエリートの台頭。インドのデジタル化は日本を超える

インドエリートの台頭。インドのデジタル化は日本を超える
[スピーカー]
キャナルベンチャーズ 代表取締役
保科 剛
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リクルートストラテジックパートナーズ Senior Vice President(Head of India and Business Success)
松田 仁史
×
元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社長
武鑓 行雄

[モデレーター]
早稲田大学ビジネススクール 教授
東出浩教

インドではアメリカ経験のあるエリートたちが母国に戻り、新たな産業を牽引している。 前回からに続き、日本をはるかに凌駕する、インドの成長力に迫る。
※本コンテンツは「Ishin Startup Summit TOKYO 2019」の内容を再構成したものです。

※【告知】2019年6月、「インド×日本のコラボレーション」をテーマにした招待制サミットをインドのバンガロールで開催します。ご興味ある方はサイトよりお問い合わせください。

保科 剛
1981年 日本ユニシス株式会社入社。数理計画人工知能分野の研究、アプリケーション開発を担当。その後、オブジェクト指向開発環境『TIPPLER』トランザクショナルORB『SYSTEMν』、システム開発技法『LUCINA』、ASP事業『asaban.com』を企画開発。2002年、ビジネスアグリゲーション事業部長。2003年、アドバンストテクノロジ本部長。2004年にCTO。2017年キャナルベンチャーズ株式会社の代表取締役に就任。経済産業省 産業構造審議会 2020未来開拓部会 委員、情報通信研究機構 ICTメンタープラットフォーム メンター、情報処理推進機構 未踏アドバンスト事業審査委員会 委員を務める。
松田 仁史
2006年 株式会社リクルート入社。メディア広告営業、経営企画、新規事業開発、中国、東南アジアのリサーチ、大手航空会社との国内JV設立および同企業の代表取締役を経て、2016年より現職。インドへの投資責任者と投資先の日本展開の支援を担う。
武鑓 行雄
ソニー株式会社で、VAIO、コンシューマーエレクトロニック機器などのソフトウェア開発、設計、マネジメントに従事。途中、マサチューセッツ工科大学(MIT)に1年間の企業留学。2008年10月、インド・バンガロールのソニー・インディア・ソフトウエアセンターに責任者として着任。約7年にわたる駐在後、2015年末に帰国し、ソニーを退社。帰国後も、インドIT業界団体であるNASSCOMの日本委員会の委員長として、インドIT業界と日本企業の連携を推進する活動を継続している。著書に、「激動するインドIT業界 バンガロールにいれば世界の動きがよく見える」(カドカワ・ミニッツブック)、「インド・シフト」(PHP研究所)がある。
東出 浩教
慶應義塾大学経済学部卒業。鹿島建設株式会社に入社し、建設JVのマネジメント・欧州での不動産投資の実務に従事。その後ロンドン大学インペリアルカレッジ修士課程修了(MBA)。2000年に、同カレッジよりEntrepreneurshipを専攻した日本人初のPh.D.を授与される。起業、創造プロセス、ビジネス倫理と哲学等が現在の主たる研究対象。ベンチャー学会副会長、各種公的委員会、東京商工会議所産業人材育成委員会ダイバーシティ推進専門委員会座長を務めるなど、学内外で幅広く活動している。

シリコンバレーで経験を積んだインド人が母国で起業している

東出:みなさんのこれまでの経験をもとに、インドで将来こんなことが起こるというイメージを教えてください。

保科:私がシリコンバレーに行くようになったのは、1990年ぐらいです。その頃はまだシリコンバレーでのインドの方の比率は高くはありませんでした。それが2000年ぐらいを契機に比率は上がってきました。スタンフォードやUCバークレーを卒業した方が増えてきて、アマゾン、グーグルで働く方も増えました。

 私がインドと深く関わるようになったのは2年前からですが、インドのスタートアップやエンジェル投資家の方と会うとみなさん、アメリカを経験されています。シリコンバレー近辺の大学を出て、グローバルIT企業でそれなりの地位で働いていました。シリコンバレーで勉強ができたので、今度はインドのためにひと働きしようと戻ってきて起業しています。海外とのネットワークも持った方が起業している、これがインドの凄さだと思います。日本のスタートアップでこれだけ学業、研究、実務の海外経験をしている人はいません。

東出:インドの方は「海外の経験を活かして母国に貢献したい」という愛国心のようなものがありますか?

保科:そういった文化的なものは感じます。それにインフォシス、ウィプロ、タタといったインドのグローバル企業がIT人材を育てており、国内での環境をつくっています。その企業のトップが引退されてエンジェル投資家やメンターになって、色々な面で応援しています。

 海外で経験した人がシニアになって戻ってきて、国内で頑張ってきた人たちもそれなりのポジションに就いていることが、インドが面白い理由だと思います。東アジアでは財閥がお金を持ち、自分で企業をつくって育てた人がお金を持つカタチではありません。ですから、投資環境やイグジット環境も違うと思います。

インドのデジタル化は日本を飛び越える

松田:私も同じことを思っていました。インド工科大学をトップで卒業した学生たちは、米国をはじめ、海外に出ていく傾向があります。それはもったいないと思っていましたが、最近ではそういった方が海外から戻ってきて、インドで起業することで、スタートアップエコシステムが広がり、投資も拡大し、お金が回るといった良い循環ができつつあります。インド政府のデジタル化の政策により、あらゆるビジネスにおいてデジタル化が進み、おそらく日本を飛び越していくでしょう。日本はそれを学ぶことになるのではないかと思っています。


 インド人の経営者はとても優秀な人が多いと思います。我々には、ビジネスをその企業と一緒に学ぶという考えがあるので、投資する際には企業をかなり細かいところまで見ます。その時の売上ではなく、どのくらいの情報の質とデータが集まるポジショニングに位置しているのか、競合優位性や今後の事業ステップについて深く議論します。その問いに対する回答の質や、スピード感も含めて可能性を感じます。

Photo: Stories of Kabeera/Shutterstock

東出:インドのデジタル化が一気に進んで日本に来るとすると、どういった領域で起こるのか、どのくらいの時間で来るのか、松田さんはどう感じていますか?

松田:法律や商慣習にも影響しますが、すべての領域で起こる可能性が高いです。例えばUberやOlaがインドに入ってきて急速な成長を遂げているのもひとつですし、サブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーなども急速に浸透しつつあります。もう少し言うと、インドで自動車の保有率は4%弱ですが、米国や日本と同様に需要が伸びていく場合、その需要が所有かシェアリングどちらを選択するかという論点です。


 日本では所有が当たり前の概念としてありますが、インドはその概念がありません。ですから、サブスクリプションモデルが先に浸透するのは、日本ではなくインドだと思います。


  インドはデジタル化が進んでいますが、メルカリのようなCtoCでの信用保証システムは進んでいないので、カーシェアリングで「この人に本当に貸していいのか」がわからない。フィンテックでも一緒ですが、これをどうつくり上げていくかが大事ですし、誰がつくるのかも注目です。

日本企業の課題は、すでにインドでは解決している

武鑓:金融関係で言うと、フィンテックは盛り上がっています。いまクレジットの問題を言われましたが、バンガロールには、ゴールドマンサックス、フィデリティ、VISAの拠点があり、彼らの研究開発はすでにインドで行われていて、グローバルな金融市場の問題を理解している人材がインドにいます。VISAが1,000人規模の拠点をつくったのですが、ブロックチェーンによってクレジットカードがなくなるかもしれないという危機感が彼らにはあります。

 従来のように仕様書を先進国で決めて、コーディングをインドでするといった時代はもう終わりました。最先端の技術分野を取り込むため、やってみないとわからないことを、トライ&エラーを繰り返しながらインドでやり始めています。

 日本の企業に聞くと日本の事情はわかるが、世界の事情はわからない。一方、インドで聞くと世界の事情がわかる。日本の企業が抱えている問題をインドで話すと、アメリカやヨーロッパでの同様の事例があってすでに問題を解いている。

 あるインド企業では、AIのチームで3万1000人が働いていると聞きました。それだけの人材を新しい分野に振りわけて、一気に育てているということです。このことを、良く考えたほうがいいと思います。日本企業は要求仕様書ではなく、課題を持ってインドのIT企業とディスカッションするといいと思います。インド市場も世界のトレンドもわかります。そういった日本とインドの連携をやるべきではないかと思います。

東出:いつ頃なにが起こるかではなく、インドにはすでにかなりのものがあるということですね。

武鑓:シリコンバレーへ行っても教えてくれないかもしれないが、インドは喜んで教えてくれると思います。先日、日本の方から「ブロックチェーンの良いアイデアが浮かんだ」と相談を受けたので、インドのIT企業に聞いたら、ブロックチェーンのプロトタイプ制作サービスというものが、すでにあるということでした。インドには世界中からアイデアが集まってくるので、プロトタイプのサービスメニューがビジネスになっているのです。

次回:出遅れている日本。とにかくインドに行け

【特集】VC・大企業が語る、インド・東南アジアスタートアップの強さ

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#1 シンガポールは、アジアのイノベーション創出拠点になる

[インドスタートアップエコシステム]
#2 インドと日本のVCが語る、日印コラボレーションの方法

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#3 なぜ私たちはインド・東南アジアに投資するのか?
#4 天才が多いインド、タイムマシンビジネスが通じる東南アジア
#5 日本企業はインド、東南アジアとこう付き合える

[オープンイノベーションハブとしての東南アジア・インド]
#6 なぜグローバル企業はインドにイノベーション拠点を置くのか
#7 インドエリートの台頭。インドのデジタル化は日本を超える
#8 出遅れている日本。とにかくインドに行け

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