2019/5/24/ 08:58

出遅れている日本。とにかくインドに行け

出遅れている日本。とにかくインドに行け
[スピーカー]
キャナルベンチャーズ 代表取締役
保科 剛
×
リクルートストラテジックパートナーズ Senior Vice President(Head of India and Business Success)
松田 仁史
×
元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社長
武鑓 行雄

[モデレーター]
早稲田大学ビジネススクール 教授
東出浩教

世界中が注目するインドのイノベーション。日本企業はインドとどうコラボレーションできるのか。日本企業が生かせる強み、方法とは。第1回第2回に引き続き、日本企業3社が語った。
※本コンテンツは「Ishin Startup Summit TOKYO 2019」の内容を再構成したものです。

※【告知】2019年6月、「インド×日本のコラボレーション」をテーマにした招待制サミットをインドのバンガロールで開催します。ご興味ある方はサイトよりお問い合わせください。

日本企業は強みのデバイス系でインドと連携を

東出:日本企業がインドとコラボレーションするには、どんな方法があると思いますか?

武鑓:日本の強みはモノづくりと言いますが、それも将来はどうなのかとも感じます。デバイス系企業はまだ強いですが、デバイス系だけのビジネスモデルは限界があります。デバイス系にはソフトウェアの人材がいないので、ソリューションビジネス、IoTの時代になると、ソフトウェア化、データ化のトレンドについて行けない。

 アメリカはデバイス系、モノづくりは強いわけではないので、日本企業がそのノウハウを持ってインド企業と連携するか、もしくは拠点を設置して人材を集めて自社開発するかすべきでしょう。日本でつくった製品、サービスをそのままインドへ売りに行ってもダメです。それをつくった人がインドへ行って、現地で考え、新しい製品やイノベーションを生み出していくことが大切です。

 本来なら日本の強みを持っている企業は、インドに来てインドでチームをつくるか、パートナーシップを組むか、スタートアップに投資するなど連携して、新しいソリューションを持って世界に出るということに可能性があると思います。

東出:日本企業にとってインドと組むには、どういったやり方がいいでしょうか?

武鑓:自社拠点をつくることが圧倒的に良いと思います。ただはじめが難しく、誰が行くのかという話になります。シリコンバレーだとみんな喜んで行きますが、インドとなると勘弁してくださいとなる。また、自社拠点でインド人材の採用が必要となりますが、優秀な人材を獲得するには、もっと、自社の技術を含めて企業の魅力を説明しないといけません。インドIT系人材の目は欧米を向いていて、あまり日本や日本企業のことを知りません。

日本とインドの関係が良好な、いまがチャンス

松田:あくまでも主観ですが、インドの方々は基本的に日本に好意的で、尊敬している一面もあると感じています。それは日本の自動車や電機メーカーがインドで活躍しているからだと思います。


 投資先の企業の経営者とやり取りする中で思うことは、彼らはとても優秀です。よく「インド人は約束を守らないのでは?」という質問をもらいますが、少なくとも私が対峙している経営者は、投資前も投資後でも期日や目標などの約束は守りますし、日本人よりよく働きます。

 仕事の進め方に対しては、少し考え方の違いがあると感じます。彼らはスピードを重視して、特別クリティカルでないものに対しては、80%合格であれば次のステップに進みます。一方で日本人は、私も含めてどうしても一つ一つのプロセスで100%を求める傾向があるので、そのギャップはあると思います。

保科:私も、日本とインドの関係はいいと感じます。それは民間レベルだけでなく政府レベルでもそうで、上手くいっているいまはひとつのチャンスです。先ほど、数万人規模の拠点の話がありましたが、スタートアップでも日本のシリーズBは数十人規模だと思いますが、インドでは数百人で、優秀な人が揃っています。13億人に向けたビジネスですから多いのは当たり前ですが、それぐらいの開発スピードでやっているということです。それだけの人材を集められる国はなかなかありませんし、だからこそシリコンバレーもインドに頼っているのだと思います。私たちも新しいことにチャレンジする場合、もう少しインドを意識したほうがいいと思います。

 私がこれから始めたいと考えているのはジョイントベンチャーで、現地の方とJVをすることもやらないといけないと思います。またいま、農業関係への出資も考えています。なにもないところからいきなり農地をつくるような話もできるので、デジタルトランスフォーメーション後の10年、20年後の日本の国土のあり方、産業のあり方を考えようとしたときには、インドでやっていたことから、多くの知見、ネットワークが得られると思います。一歩踏み込んだ関係性づくりというのが、今後、日印で広がると良いと思っています。

とにかくインドへ行くこと

東出:オープンイノベーションのひとつの可能性として、インドのベンチャー企業とどうコラボレーションして新しいものをつくっていくのかということもあると思いますが。

保科:関係性はいいのでJVでも投資でも一緒にやりましょう、とにかくやっぱりインドに行くことだと思います。

松田:インドのテクノロジーを社内で活用できる可能性も感じていますし、仮に我々がインド市場に参入することになった場合でも、投資先のもつ事業資産やエコシステムは、強力な武器になるのではないかと思っています。

東出:これから生まれてくる独立色の強いインドのベンチャーと、日本企業はどういった組み方があるのでしょうか。

武鑓:先ほども話しましたが、1000社ぐらいのグローバル企業がインドに拠点を持って、そこを軸にアクセラレータープログラムを始めています。本社のアメリカ、ヨーロッパからやるわけではなく、現地拠点でインドのスタートアップを巻き込んで、自社のイノベーションを加速させています。プラットフォーマーと呼ばれる企業も、デベロッパーを巻き込もうとするとインドに行くしかありません。その結果、新しいプラットフォームの情報はインドのほうが早いわけです。

 日本企業はそこまで行けていないので「どうしますか」というのがテーマだと思います。出遅れてはいるが、欧米とは違う強みを武器にいかに展開するかを考えるしかないと思います。簡単ではありませんが、ここの話は避けては通れません。企業の中期戦略を考えると、インドは外せない国になります。マーケット、人材戦略だけでなく、研究開発でもインドが重要だと思うので、経営陣を巻き込まないといけない。インド・シフトは、マーケットとしてではなく、インドとどう向き合うかだというのが私の考えです。

【特集】VC・大企業が語る、インド・東南アジアスタートアップの強さ

[東南アジアスタートアップエコシステム]
#1 シンガポールは、アジアのイノベーション創出拠点になる

[インドスタートアップエコシステム]
#2 インドと日本のVCが語る、日印コラボレーションの方法

[東南アジア・インドに投資している日本人VCたち]
#3 なぜ私たちはインド・東南アジアに投資するのか?
#4 天才が多いインド、タイムマシンビジネスが通じる東南アジア
#5 日本企業はインド、東南アジアとこう付き合える

[オープンイノベーションハブとしての東南アジア・インド]
#6 なぜグローバル企業はインドにイノベーション拠点を置くのか
#7 インドエリートの台頭。インドのデジタル化は日本を超える
#8 出遅れている日本。とにかくインドに行け

保科 剛
1981年 日本ユニシス株式会社入社。数理計画人工知能分野の研究、アプリケーション開発を担当。その後、オブジェクト指向開発環境『TIPPLER』トランザクショナルORB『SYSTEMν』、システム開発技法『LUCINA』、ASP事業『asaban.com』を企画開発。2002年、ビジネスアグリゲーション事業部長。2003年、アドバンストテクノロジ本部長。2004年にCTO。2017年キャナルベンチャーズ株式会社の代表取締役に就任。経済産業省 産業構造審議会 2020未来開拓部会 委員、情報通信研究機構 ICTメンタープラットフォーム メンター、情報処理推進機構 未踏アドバンスト事業審査委員会 委員を務める。
松田 仁史
2006年 株式会社リクルート入社。メディア広告営業、経営企画、新規事業開発、中国、東南アジアのリサーチ、大手航空会社との国内JV設立および同企業の代表取締役を経て、2016年より現職。インドへの投資責任者と投資先の日本展開の支援を担う。
武鑓 行雄
ソニー株式会社で、VAIO、コンシューマーエレクトロニック機器などのソフトウェア開発、設計、マネジメントに従事。途中、マサチューセッツ工科大学(MIT)に1年間の企業留学。2008年10月、インド・バンガロールのソニー・インディア・ソフトウエアセンターに責任者として着任。約7年にわたる駐在後、2015年末に帰国し、ソニーを退社。帰国後も、インドIT業界団体であるNASSCOMの日本委員会の委員長として、インドIT業界と日本企業の連携を推進する活動を継続している。著書に、「激動するインドIT業界 バンガロールにいれば世界の動きがよく見える」(カドカワ・ミニッツブック)、「インド・シフト」(PHP研究所)がある。
東出 浩教
慶應義塾大学経済学部卒業。鹿島建設株式会社に入社し、建設JVのマネジメント・欧州での不動産投資の実務に従事。その後ロンドン大学インペリアルカレッジ修士課程修了(MBA)。2000年に、同カレッジよりEntrepreneurshipを専攻した日本人初のPh.D.を授与される。起業、創造プロセス、ビジネス倫理と哲学等が現在の主たる研究対象。ベンチャー学会副会長、各種公的委員会、東京商工会議所産業人材育成委員会ダイバーシティ推進専門委員会座長を務めるなど、学内外で幅広く活動している。

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