2019/5/13/ 07:30

【スタンフォード式 睡眠術】
短時間で質の高い睡眠をとるには

米国スタンフォード大学 医学部精神科教授
スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長 西野 精治
【スタンフォード式 睡眠術】短時間で質の高い睡眠をとるには

多忙なビジネスパーソンの中には、睡眠時間を削って仕事をしている人も少なくない。しかし、睡眠時間を削って仕事をすることほど、非効率なことはない。良質な睡眠なくして、質の高い仕事はできないのだ。今回はスタンフォード大学で睡眠学を研究する西野精治氏が「仕事の生産性を上げる睡眠術」を3回にわたって指南する。

短時間でできるだけ疲れをとる睡眠方法

―忙しい時はなかなか睡眠時間が確保できないこともあります。短時間の睡眠で、できるだけ疲れを取るにはどうしたらいいでしょうか。

 睡眠には質と量が両方大事です。一番大事なのは睡眠時間という「量」を確保することですが、どうしても難しいときは睡眠の「質」を上げるしかありません。同じ時間寝るのであれば少しでも質を上げた方がいい。

 質を上げるには、入眠時の深い睡眠が大事です。入眠時の深いノンレム睡眠中に成長ホルモンが出ます。この成長ホルモンが新陳代謝を促進し、体の修復を行い、美容やアンチエイジングにも役立ちます。深い睡眠は、眠気や疲労からの解放、免疫力の増強、老廃物の代謝 にも深く関わります。最初の深いノンレム睡眠を90分程度確保できれば、睡眠の重要なミッションをほとんどすべて確保できるのです。この90分を私は「黄金の90分」と呼んでいます。

―どうすれば深い睡眠を取れますか。

 まず睡眠の生理機能を理解することです。たとえば眠たくなったらすぐ寝るのも一つです。その時には、睡眠圧が上がっているので、深い睡眠が出ます。眠たい時に眠らないと入眠のタイミングを逃し、寝つきが悪くなることもあります。

 そして重要なのは体温です。体温が下がれば入眠しやすくなるし、深い睡眠が出ます。

Photo:Shutterstock, Leszek Glasner

シャワーでは不十分?よく眠れるお風呂の入り方

―お風呂に入るとよく眠れると聞きます。

 そうですね。お風呂に入ると体温が上がるので、逆じゃないかと言われることもあるんですが、違います。たしかにお風呂に入ると一時的に体温が上がるのですが、その後に熱を放散して、お風呂に入る前よりも下がります。体温が下がると、寝つきが早くなり、深い睡眠がとれるのです。

 ただ、入浴のタイミングは重要です。40度のお風呂に15分入ると、身体の深部体温が0.5度くらい上がり、90分かけてもとの体温まで下がります。ですから入浴してから90分以内に寝ようとすると、体温が高くて寝つきにくくなります。入浴後、すぐに眠る場合はシャワーで済ませたり、あまり長湯しないほうがいいでしょう。

―米国だとシャワーが一般的ですが、シャワーだと効果はどうでしょう。

 シャワーでも皮膚の血管は拡張し、熱放散は起こるので、効果はあります。ただ、じっくり入浴して体の内部の温度を上げる効果に比べれば、効果は小さくなります。お風呂に浸かれない場合、足湯でもいいと思いますよ。短時間で足の血管を拡張でき、熱放散は起こしやすくできます。

 生理的には手足から熱が逃げて体の温度が下がらないと、寝つきが悪いし、深い睡眠も出ません。よく女性で冷え性の人などが寝るときに靴下を履きますが、あれはかえって良くないんです。寝る前に足の血流を増やす工夫をしてください。

自分なりのポジティブルーティンを作れ

―睡眠の環境はどう整えればいいでしょうか。

 睡眠は脆いもので、外的な環境にも影響を受けます。たとえば部屋の室温は大事です。一概に言えませんが、自分が快適だと思う室温にするのがいいのです。睡眠時は「夏は25度、冬は19度」という人がいますが、これは省エネの観点の話だと思います。私の場合、室温は22度から24度で調整しています。自分で快適だと思う室温に調整して、その室温にあったパジャマで過ごせばいいのです。

 あとは不安や緊張を取り除き、自分がリラックスしているかどうかも大事です。そのために眠る準備を整える「ポジティブルーティン」を作るのはいいと思います。万人に効果があるかはわからなくても、生理的な裏付けがあり自分にとって効果のあるものを、自分の習慣にしていくのです。睡眠は個人差がありますから、他人にとっての最適解は自分にとっての最適解ではないこともあります。自分の最適解を見つけていくべきでしょう。

Photo:Shutterstock, Volha_R

先日のインタビューで瞑想アプリについての話題も出ました。日本では良い香りの出るホットアイマスクも売れ続けています。

 ホットアイマスクは自律神経に作用するのだと思います。副交感神経を優位にして、リラックスさせる効果があるのでしょう。自分にとって効果があるのであれば、ポジティブルーティンの一つになります。

―「夜22時から2時のあいだがゴールデンタイムでこの間に寝るのが良い」という話もありましたが、あれは本当なのでしょうか。

 それは全く根拠のない話です。ゴールデンタイムというのは、おそらく成長ホルモンが出るタイミングのことを言っていると思います。成長ホルモンは新陳代謝を促す重要な物質で、子供だけでなく量は減りますが、大人になっても老人になっても出ます。

 成長ホルモンは何時に寝たら出ると決まっているわけではなく、最初の深いノンレム睡眠時に出ます。何時に寝ても最初に深いノンレム睡眠が出現すれば出ます。もし「20時に寝たいのにゴールデンタイムの22時までガマンしよう」などと考えていたとしたら、まったくのナンセンスです。入眠時に深い睡眠がでるように規則正しい生活をすることが大事です。

目次

【スタンフォード式 生産性を上げる睡眠術】

#1 短時間で質の高い睡眠をとるには
#2 睡眠は仕事の成果にどれほど影響を与えるか
#3 カフェイン、時差ボケとの付き合い方

西野 精治
米国スタンフォード大学 医学部精神科教授
スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長
1955年大阪府出身。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、2000年にはグループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。2005年に睡眠生体リズム研究所の所長に就任。1987年に渡米以来、30年以上に渡り、睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。2019年5月より株式会社ブレインスリープ、代表取締役・最高技術責任者も務める。著書に『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)、『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)がある。

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