2019/5/15/ 07:30

【スタンフォード式 睡眠術】
カフェイン、時差ボケとの付き合い方

米国スタンフォード大学 医学部精神科教授
スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長 西野 精治
【スタンフォード式 睡眠術】 カフェイン、時差ボケとの付き合い方

前回、前々回に続き、「仕事の生産性を上げる睡眠術」をお伝えする。今回はカフェイン、昼寝、時差ボケ、睡眠をサポートするサプリなどについて解説する。

エナジードリンクやコーヒーは悪影響なのか?

―ビジネスパーソンは、日中にエナジードリンクやコーヒーをとりがちです。これはどれくらい睡眠に影響しますか。

 エナジードリンクやコーヒーの成分は、カフェインがメインです。カフェイン自体は植物由来で人間の体では作れないもので、覚醒作用があります。癌の発症率を下げたり脳神経細胞を保護するなど、メリットも多いのですが、大量に飲むと動悸や頭痛がしたり、カフェイン中毒になることもあります。カフェインは1日400mgくらい、コーヒーだと1日4杯程度は摂取しても大丈夫ですが、分散して摂取する必要があります。

 一つ注意すべきなのは、カフェインは半減期が長いことです。摂取から4〜5時間経たないと、カフェインの血中濃度が半分にまで下がりません。夕方や寝る前に大量に摂取するのは気をつけた方がいいでしょう。

 ただこれは原則論であり、美味しいディナーを食べたら食後のデザートと一緒にコーヒーも飲みたいでしょう? それは個人の問題、度合いの問題でもあるので、飲んではダメということではありません。

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よい昼寝環境の整え方

―睡眠不足の人にとっては、昼寝は効果があると言われています。オフィスだとなかなか昼寝は取りづらいですが・・。

 現代人には昼寝はメリットの方が大きいと思います。パフォーマンスも上がるし、疾患リスクも下がる。これが社会の共通認識になっていくべきです。私のように自分の裁量で働ける人は、14時に疲れたなと思ったら家に帰って昼寝してもいいんですが、普通はそれができません。

 昼寝のために特別な仮眠室やベッドは用意しなくても良いと思います。部屋の照明を落とし、角度の調整できるゆったりした椅子を用意することをお勧めします。近くの人を気にしなくて済む、プライバシーを保てる工夫があればなおよしです。飛行機のビジネスクラスのような、隣に見知らぬ人が寝ていても気にならないような環境です。

 そして一番大事なのは、昼寝に対する周囲の理解です。決して怠けているわけではなく、自分と会社のパフォーマンスのためだという理解が必要です。睡眠を削って働くハードワークな上司だと、なかなか昼寝に対する理解が得られません。

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時差ボケはなぜ起きる?メカニズムと対策

―グローバルで働くビジネスパーソンは、海外出張で時差ボケにも悩まされがちです。時差ボケ対策はどうしたらいいですか。

 時差ボケはまずメカニズムを知ることが大事です。生体リズムで一番強いのは体温。体温は昼間が高くて夜が低い、この繰り返しです。これはパフォーマンスとも比例しています。体温が低い時は本来寝ている時で、パフォーマンスも上がりません。

 時差ボケというのは、現地時間と体内時計がずれている状態です。たとえば、日本からサンフランシスコに出張する場合を考えてみましょう。サンフランシスコと東京は17時間の時差があります。朝、サンフランシスコに到着しても、体内時計はまだ夜です。体温が低く、身体は眠いという状況です。そしてサンフランシスコが夜になると、今度は体温が上がってしまって、眠れなくなります。先ほどお話しした通り、サンフランシスコと東京は17時間の時差があります。動物は1日1時間しか体内時計を合わせられず、通常合わせやすい方にずれるので、マイナス7時間の時差でリズムが再び同調するまで、約7日間かかります。また、リズムを前進させるマイナスの調整は後ろにずらすより辛いことがわかっています。

 対策としては、できるだけ現地の時間で生活するのが原則ですが、現地の時間やリズムを一切気にしないというのも手です。特に滞在期間が短い場合、現地に無理に合わせず、眠いときに眠って、大事なアポイントだけ集中すればいのです。

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―アメリカでは睡眠をサポートするメラトニンのサプリがドラッグストアで販売されています。出張者が利用するのはどう思いますか?

 それは理にかなっています。メラトニンは夜に分泌されるホルモンですが、眠るタイミングで分泌されないと、よく眠れなくなります。時差ボケ状態だと、現地の夜にメラトニンが分泌されにくくなるので、それをサプリで補うのは理にかなっています。

 メラトニンのサプリは、日本では売られていませんが、アメリカでは空港でも売っています。ただ副作用がないわけではないので、時差ボケで仕方ない時に飲む程度にしておいたほうがいいでしょう。若い人であれば、生活習慣を整えてきちんと睡眠をとれば充分なメラトニンは分泌されます。ふだんからサプリで補う必要はありません。また、メラトニンの分泌は光によって抑制されますので、就寝前に強い光を避け、就寝中も電気を消すことも大事です。

目次

【スタンフォード式 生産性を上げる睡眠術】

#1 短時間で質の高い睡眠をとるには
#2 睡眠は仕事の成果にどれほど影響を与えるか
#3 カフェイン、時差ボケとの付き合い方

西野 精治
米国スタンフォード大学 医学部精神科教授
スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長
1955年大阪府出身。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、2000年にはグループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。2005年に睡眠生体リズム研究所の所長に就任。1987年に渡米以来、30年以上に渡り、睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。2019年5月より株式会社ブレインスリープ、代表取締役・最高技術責任者も務める。著書に『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)、『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)がある。

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